そもそも肺がん検診は受けた方が良いの?
毎年12万人以上の方が肺がんと診断されています。男性は10人に1人、女性は21人に1人が、一生のうちに「肺がん」と診断されることになります。また、日本人の死因の第1位はがんですが、その中でも肺がんによる死亡者数が最も多く、年間7万5千人以上となっています。
このように肺がんの死亡者数が多い原因は、早期の肺がんは無症状のことが多く、発見が遅れやすいことにあります。症状に気づいてから検査を始めると、多くの場合肺がんは治せない段階まで進行しています。
そこで、肺がんの早期発見の確率を上げるため、定期的に肺がん検診を受けることが重要です。
低線量CTってなに?
限りなく放射線の被曝量を少なくしたCT検査です。一般的なCTに比べ、低線量CTの被曝量は5分の1程度です。一般的なCTに比べ少し画質は落ちますが、早期の肺がんを十分発見できる能力があります。
レントゲンの検診を受けています。それでは不十分なの?
レントゲン検査は、一方向からX線を当てて体の「影絵」をみる検査です。胸のレントゲンをとった場合、肺、心臓、血管、骨など、いろいろな臓器の影が重なります。このため、レントゲンを使った肺がん検診には、以下のような限界があります。
- 小さい肺がんは発見が難しい。
- 異常な影があった場合、それが病気の影なのか、正常な構造が重なってできた影なのか、区別することができない。
- 肺の約3分の1は心臓・骨・横隔膜のかげに隠れるため、このような場所にできた肺がんは発見できない。
これらのデメリットを克服しようと、CTを使った肺がん健診が注目されています。
CTを使った健診は、レントゲンに比べて何が良いの?
CT検査は、360度回転させながらX線を体に当て、体内を通過したX線量をコンピュータで解析することで、「体の輪切りの画像」をミリ単位の精度で見ることができます。CTによる肺がん検診には、以下のメリットがあります。
- 解像度が高く、ミリ単位の小さな肺がんが発見できる。
- 体の輪切りの画像が見られるため、肺が他の臓器に隠れることがなく、肺のすみずみまでしっかり評価できる。
この結果、レントゲンによる検診と比較し、肺がんの発見率は約10倍高くなると報告されています。早期に肺がんを見つけ、早い段階で治療を受ければ、がんを完全に治せる可能性は大きく高まります。
また、CTでは、がん以外の肺の病気(COPD、間質性肺炎、慢性感染症など)が発見できることもあります。
どんな人がCT健診を受けた方が良いの?
特に以下の方に大きなメリットがあります。検査をご検討ください。
- 50歳以上の方
- 喫煙される方、または過去に喫煙していた方
- 同居者に喫煙者がいる方
- 血縁者に肺がん患者さんがいる方
- 咳、痰、胸痛が続く方
放射線の被ばくが心配です・・・
診察中に患者さんから時々聞かれる質問ですが、問題ありませんとお答えしています。
我々は普段の生活の中でも放射線を受けています。参考までに、検査によって受ける放射線量と合わせ、以下にまとめました。
胸部レントゲン | 0.05mSv |
---|---|
低線量肺がんCT健診 | 約1mSv |
一般的な胸部CT | 約5mSv |
東京からニューヨークを飛行機で往復(高度による宇宙線の増加) | 0.2mSv |
自然放射線(日本で1年間暮らすと自然界から受ける放射線) | 2.1mSv |
短い期間に100mSVを超える線量の被曝があると、発がんリスクが上昇し、それ以下では発がん性は認められません。
短期間にレントゲンを2000回程度、または低線量CTを100回程度実施すると、健康への影響が出る可能性があります。ただし、このような回数検査を繰り返すことはあり得ません。具体的にイメージしてみると、少しご安心いただけるのではないでしょうか。
もちろん、不要な検査を繰り返すことは良くありません。しかし、がんの中で最も死亡者数が多い肺がんを、早期発見できるというメリットはとても大きいものです。必要以上に怖がることなく、検査をご検討ください。
費用はどれくらいかかるの?
検査費用は12,000円(税込)です。検査とは別日に、放射線専門医読影を含む結果説明料金を含んでいます。
また、同日に複数部位の撮影も可能ですので、頭部・腹部についても検査を希望される方は、お声がけください。