新型コロナウイルス感染後の咳の特徴

新型コロナウイルス罹患後の咳が心配な方へ

新型コロナウイルス罹患後の咳が心配な方へ新型コロナウイルスに罹患すると、症状が治まった後に咳症状が持続することが多いため、後遺症を心配される方も多いと思います。
しかし、長引く咳症状は、新型コロナウイルスに限ったものではなく、インフルエンザをはじめとする他の呼吸器感染症に罹患した際にもよく見られる症状です。
したがって、新型コロナウイルス罹患後の咳だからといって過度に心配することなく、他の呼吸器感染症罹患後と同様に原因を調べ、それに応じて治療していくことが大切です。

感染後咳嗽

風邪などのウイルスが咳のセンサー(咳受容体)に感染して神経が過敏になり、ウイルスがいなくなった後もしばらく過敏な状態が続く状態です。自然に咳は少なくなっていき、最終的には治癒します。しかし咳が長期間続くため、睡眠障害や胸痛などが生じ、生活の質が下がってしまいます。
症状が強い場合には、抗ヒスタミン薬、漢方(麦門冬湯)、中枢性鎮咳薬(いわゆる咳止め)、吸入ステロイド(有効であったという報告と、無効であったという報告の双方があります)などを使用します。

咳の特徴

  • 痰がからまない乾いた咳が出る。
  • 昼間もみられるが、夜、朝に強い。

二次的な細菌感染による咳嗽

新型コロナウイルスに感染して免疫力が低下したことにより、別のウイルスや細菌による感染症が生じることがあります。コロナ感染による症状がいったん改善してきた後、再び症状が悪化する場合には、特に疑われます。このような場合、診察、胸部レントゲン、血液検査などを行います。細菌感染であった場合には、抗生剤で治療します。

咳の特徴

  • 咳が一度改善してきた後、再び悪化する。
  • 痰が増え、湿った咳になる。

  • 熱が出る

逆流性食道炎による咳嗽

逆流性食道炎とは、胃酸が胃から食道に逆流することで、食道に炎症が起き、胸焼けやのどの違和感が生じる病気です。逆流した胃酸が、食道やのどにある神経を刺激することで、咳が出ます。
新型コロナウイルスに感染した後、逆流性食道炎になりやすくなるとの報告があります。
逆流性食道炎の可能性が高い場合には、胃酸分泌を抑える薬を処方します。

咳の特徴

  • 姿勢の変化(前かがみになる、仰向けで寝る)で咳が悪化しやすい。
  • 食事によって咳が悪化しやすい。

咳ぜんそくによる咳嗽

気管支ぜんそくの一歩手前の状態です。気管支ぜんそくと違い、喘鳴(呼吸をするときにヒューヒュー・ゼーゼー音がする)は見られず、咳だけが出ます。
治療は吸入ステロイド薬が中心となります。咳ぜんそくは、放っておくと30-40%の方が気管支ぜんそくに移行します。気管支ぜんそくに移行する確率を下げるため、しっかりと治療することが大切です。

咳の特徴

  • 夜から朝にかけて咳が悪化する。
  • 風邪をひくたびに咳が長引きやすい。

咳ぜんそく

アトピー咳嗽

アレルギー性鼻炎、アトピー皮膚炎などのアレルギー疾患を持っている方に生じやすい病気です。
咳ぜんそくと同じくアレルギーに関係した病気であり、症状も似ていますが、咳ぜんそくと違い気管支ぜんそくに移行することはほとんどありません。このため、咳がおさまれば治療を終了できます。治療は、抗ヒスタミン薬、吸入ステロイド薬などを使用します。

咳の特徴

  • のどのかゆみ、違和感がある。
  • 痰がからまない乾いた咳が出る。

その他の呼吸器・アレルギー疾患の発症

多くの場合は上記のような原因が複合的に関わって咳が続いています。その他にも以下のような原因が考えられます。

  • もともとCOPDや間質性肺炎などの呼吸器疾患をお持ちの方が、新型コロナウイルスに感染することで症状が悪化します。この場合は、疾患の種類に応じて治療を行います。
  • 考えられる様々な検査や治療を行なっても原因が特定できない場合、原因不明の慢性咳嗽と診断されます。この場合は、鎮咳剤やリフヌアにより治療を行います。

新型コロナウイルス罹患後の咳に対する検査

新型コロナウイルス感染症が治った後も咳症状が継続している場合には、血中酸素濃度の測定、胸部レントゲン(必要に応じてCT検査)、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素測定(FeNO)、血液検査などを行います。ただし、新型コロナウイルス感染症発症から10日程度はウイルスを排出している可能性があるため、この間に来院された場合、全ての検査を行えないことがあります。
また、息切れを伴う場合には、新型コロナウイルス感染症によって心不全や不整脈、心筋炎を発症した例の報告があることから、心電図や超音波検査を行うこともあります。

CT検査